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はしがき
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| 本書は,法科大学院・司法改革といった新しい時代の流れや要求を見据えて作られた,新タイプの民事訴訟法スタンダード・テキストである。 一見すると,構成などは標準的なものに近く,オーソドックスなテキストに見えるが,以下のような従来のテキストにない特徴を有している。 第1に,法学部や法科大学院(未修者コース)で初めて民事訴訟法を学ぶ読者を対象にしているが,具体的な書式やそのひな型あるいは当事者の言い分による事例を豊富に使い,実際の民事訴訟のイメージがつかめるようにしている。従来のテキストは,民訴理論の抽象的な説明に傾斜していたために,いくら読んでも実際の民事訴訟の姿がつかめないきらいがあった。実際の書式などが入っていれば,手続の節目ごとのメリハリがつくだけでなく理論的な説明が書式の中にどのように反映されるかが分かり,読者が自ら使える知識としての実感が持てるはずである。法律学の中でも,特に「理論と実務の架橋」が求められる民事訴訟法のテキストでは,本書のような工夫は必須なはずである。 第2に,同様な趣旨から,本書の巻頭に裁判審級図や第1審手続の流れとして民事訴訟全体を図解し,本文中にも手続の流れを説明する図や統計を随所に入れて分かり易さを心がけた。手続全体の流れの中で,今読んでいる箇所の解説の位置付けが常にできるようにするためである。 第3に,新しい動きに対応した記述をできる限り増やしてある。たとえば,近時の実務からの新しい動きとして要件事実論がある。これを受けて,民事訴訟の流れ,弁論主義,証明責任で要件事実との関係を論じているが,それにとどまらず要件事実を審理の中核概念として説明している。国際民事訴訟法や当事者論の発展,最近の争点整理や計画審理,あるいは証拠収集の立法や判例,個別具体的な証明責任の検討など,新しい問題について学説の息吹きが感じられる工夫をしている。 これに対して,訴訟物理論の対立のように従来のテキストでは理論的に重要であるとして相当のスペースを割いて説明していた部分を,本書では実際的な差異を中心とした簡明な説明で済まして,抽象的な訴訟物理論の解説は実際の民事訴訟の理解に必要な範囲にとどめるという方針を貫いている(民事訴訟の目的論も同様)。 第4に,今のわが国の民事訴訟法学界を支える中堅の研究者に,各々の得意領域で思う存分に腕をふるってもらうことにしたことである。現在のように研究領域が爆発的に拡大してくると,少人数の執筆者では全部に目が行き届かないし,大人数ではまとまりを欠いてくる。本書のように,20人程度の研究者に得意な章を担当してもらい,担当部分の書き方は各執筆者の裁量にある程度委ねることが,バランスをとりつつ分量のわりに水準の高いテキストにつながるはずである。 第5に,判例については本文中でもふれつつ,欄外で本書の姉妹書である『判例講義民事訴訟法』(悠々社,2001)あるいは『民事訴訟法判例百選〈第3版〉』(有斐閣,2003)などの判例解説との連係をつけることにより,必要があればより深い判例研究が可能なようにしている。法学部でのスタンダード・テキストを目指すと,分量的な制限から本書程度の頁数が限界となるし,かといって活字のポイントを下げれば読みにくくなる。その限界を踏まえつつ,判例学習は他の判例解説書に委ねているから,法科大学院(未修者コース)で本書を利用される際は,それらの判例解説書の併読を勧める。 本書のこれらの特徴を理解していただければ,本書が新しい時代を見据えた,類書とは異なるスタンダード・テキストであることに納得して,読者に利用して頂けると信じる。本書のこういった新しい試みが成功しているか否かは,もちろん後世の評価に委ねるしかないが,これからの民事訴訟法のテキストが目指すべき一つの方向性であることだけは間違いないだろう。 本書の執筆は,法科大学院での法曹養成や新しい法学部教育のため,目も回るほど忙しい中をぬって,各執筆者の必死の努力によってなされた。また,各執筆者により,本書では最新の学説・実務が紹介されており,現在のように変化が激しい法律学のテキストとしては,相応の義務は果たしているといえるだろう。 本書がこのようにまとまることができたのは,各執筆者に負うところが大であるが,特に書式や裁判審級図については薮口康夫教授が作成してくれたし,実務的視点については西野喜一教授(元判事)が本書をすみずみまで目を通して数々の指摘をして下さった。また,須藤忠臣社長をはじめとする悠々社の方々の行き届いた支援と強い督促がなければ,本書が陽の目を見ることもなかったであろう。 本書が時代の要請にかなった新しい民訴法のテキストとして,法学部や法科大学院の学生諸君に何らかの形で利用してもらえれば,執筆者一同これにまさる喜びはない。 い。 |
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