発刊にあたって |
|---|
|
一 筑摩書房の現代法学全集の一巻として、『債権総論上』を昭和五七年(一九八二年)に、『債権総論下』を昭和六二年(一九八七年)に世に送り出してから、上では一〇年、下でも五年の年月が経過した。昨年には上下とも品切れとなり、何とかして新版(改訂版)を出す必要に迫られていた。さいわい悠々社が出版を引き受けて下さったので、その作業にとりかかることになったが、現時点での全面的改訂作業は、時間の関係その他諸般の事情から困難であるため、上下(以下「旧版」という)をそのまま合本して一冊とすることを基本方針とし、ただ、法令の改正等のためどうしても旧版の叙述を改める必要のある部分や、旧版の叙述で内容的に不適切であった箇所についてのみ修正を施し、それ以外のところは、必要に応じて末尾に「補章」を付加し、そこで適宜、補説することとした。
ただ、第一章の緒論の部分は、債権の概念、給付・給付行為・給付結果、債務と給付義務・附随的注意義務、保護義務等に関して、私自身の考え方が旧版と現在とでは少し変っているので、全面的に組み直していただくこととした(一―二八頁)。 増補分(補章)では、旧版で取り上げなかった「債務不履行責任と不法行為責任との関係(請求権競合問題)」について、やや詳しい説明をつけ加えた。 二 今回、本体部分において旧版を修正した箇所は、次のとおりである。 1 旧版中の明白な誤植は訂正した。参考文献の引用はもとのままにしてある。したがって、新版や改訂版の出されている著書や判例解説、演習ものについては、往時のままの引用で、著者および読者に対して申訳ないがおゆるしいただきたい。ただし、『民法判例百選U 債権』だけは最も新しい「第三版」(一九八九年)に合わせて引用番号、頁数を訂正した。 2 法令の改廃に伴う修正 @通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和六二年法四二号)の制定に伴うもの――四六頁―四八頁。A借地借家法(平成三年法九〇号)の制定に伴う修正――二四〇頁、二四三頁―二四六頁、四八二頁、六〇四頁(賃借権の対抗力の問題)。B民事保全法(平成元年法九一号)の制定に伴う修正(引用条文のみ)。 3 旧版の記述が不適切であったことによる修正 @五九頁――2支分的利息債権と元本債権との関係についての説明中、ロハニの部分。A三一四頁(一二行目)――最判昭四九・一二・一二裁判集民一一三号五二三頁を挿入して記述を改めた。B五五八頁――代物弁済契約による債権消滅の効果の発生のための要件について記述を補正した。C五六八頁(八行目以下)――記述の補正。D五八二頁六行目(法定相殺に関する判例)の記述の訂正。 三 末尾の「補章」においては、本来ならば、旧版以降の新しい学説・判例、著書、論文をそれぞれの箇所において洩れなく拾い上げ、紹介・引用・コメントなどをすべきであるが、時間の制約や私自身の能力不足から、十分に果たすことができなかった。この点、お詑び申し上げるとともに、将来、新版を出すような機会に恵まれたときは、何とか責を果たしたく願うものである。 以上に述べたように、本書は〔増補版〕とするにとどまったが、債権法の学習の上でいささかでもお役に立つことができれば著者として嬉しく思う次第である。 |
| 書籍情報へ | 「目次」へ |