〔第2版〕発刊にあたって

 

 

奥田 昌道 

 

 

Ⅰ 『判例講義 民法Ⅰ 総則・物権』を刊行したのは平成14年(2002年)5月であった。

 

 同書を刊行するに至った理由については、同書の「発刊にあたって」に記してある。要約すると、民法典はフランス民法典とドイツ民法草案などを参照しつつ制定されたが、内容的には、これらの法典・草案の中から諸制度の基本的・原則的な条項を取り入れたものの、細目については、民法典施行後の学説・判例による補充を予定した可塑性に富んだ内容の法典であったこと、そのために制定後100年以上を経た今日まで大きな改正を経ることなく存続し続けてきたこと、他方では、学説・判例による著しい「法の継続的形成」の結果、今日では、民法典と判例法とが異なる様相を呈することが少なくなく、民法典を見ただけでは民法の現実の相が見えなくなっている状況にある。制度の展開過程や学説の現状については、教科書・体系書等によって学習可能であるが、それと並んで、判例の展開過程や現状を包括的かつ詳細に学ぶことが不可欠であり、そのための信頼できる重厚な解説書が切望されるところである。『判例講義 民法Ⅰ 総則・物権』はこのような要望に応えるべく刊行されたものである。そして、同書の刊行以来、大学法学部および法科大学院の学生諸氏により愛用されてきたと言えるであろう。

 

 Ⅱ 同書の刊行後、「民法の一部を改正する法律」(平成16年法律第147号、平成17年4月1日施行)により、民法の現代語化、保証分野の改正等が図られたことに伴い、同書の〔補訂版〕を平成17年(2005年)4月20日に発行して関係箇所の補訂を行った。次いで5年後の平成22年(2010年)3月には36件の判例を補充した「追補判例集」を作成して〔補訂版〕に挿入した。このようにして同書は判例の展開を吸収するように努めてきたが、〔補訂版〕の発行以来9年を経た今、その間の判例の変貌を考慮し、新たに追加する判例24件、削除5件で、合計183件の判例を収録する『判例講義 民法Ⅰ 総則・物権〔第2版〕』を刊行する運びとなった。このような追加判例の選択と旧判例の削除の作業を遂行していただいた安永教授の尽力に感謝申し上げるとともに、短期間に新判例の執筆と旧判例の補正を行っていただいた執筆者各位に厚くお礼申し上げたい。

 

 Ⅲ 本書の特色としては、すでに〔初版〕において顕著に表れていたところであるが、民法分野のうちの総則・物権の注目すべき判例をブロックごとにまとめて取り扱い、それらの判例相互間の関連性に留意した解説を施すことによって、個々の判例の理解を深めるのに役立つのみならず、判例群の全体を体系的に理解することができるように配慮されていることである。また、「参考文献」の学習により、当該の制度そのものへの理解が深められ、学説と判例の相互の関連についても深く学ぶことができるように工夫されている。現在、民法の学習用に様々の工夫を凝らした参考書が多数刊行されているが、各自の基本書を踏まえた上で本書を熟読されるならば、高レベルの知識と理解力が培われることは間違いないと言えるであろう。

 

平成26年(2014年)9月 

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