はしがき

 労働法は流動的であるといわれる。時代の変化、利害対立関係にある労使間の問題を対象にする学問であることを考えれば、当然のことであるかもしれない。日本で『韓国労働法』を出版したいと思って、佐藤昭夫先生に御相談したのは10年ほど前のことであった。韓国労働法の紹介にとどまる作業をするのに長年の年月を要したのは、まず私の不勉強や怠けによるものであったことはいうまでもない。ただ、敢えて申し上げれば、韓国労働法の激変という時代状況を、その理由としてあげることができる。校正の途中にも労働法は変わっていった。それは韓国労働法が生きている証ともいえるので、大いに歓迎すべきことであるといえるかもしれない。現在もなお流動的状況ではあるが、大局的にみると韓国労働法は、ほば体系化されたといえる。 
 不勉強でありながら、なぜ私が『韓国労働法』を出版したのか。第1に、遅くなったが古い約束を守ることであった。第2には、韓国の留学生として日本との交流に少しでも役立つことができればと思ったからである。片岡曻先生がお書きになった『労働法(1)』(有斐閣、1993)・『労働法(2)』(同、1994)を、韓国で翻訳して紹介した(『労働法』三知院、1995)のも、その一環であった。 
 『韓囚労働法』をまとめることは、私の能力では不可能に近い作業であった。このような作業は、韓国の他の留学生、すなわち、リ・テイ《原文では漢字》(韓国外国語大学助教授)、廬尚憲(東京都立大学助手)、朴宣映(大坂市立大学大学院生)等に任すべきものであったかもしれない。本書は、内容的な面においても、優れた韓国留学生や日本の労働法研究者の方々に誇れるものとは言い難いからである。 
 本書に不足するところは批判を仰ぎたいし、また補っていただくことを心から念願する。本書の執筆に当たっては、できるだけ客観的こ書くことと共こ、私見を交えて構成していこうと心がけたのは、以上のような批判と補充を願ったからでもあった。 
 本書が完成に至ったのは、長い間にわたって御指導をいただいている佐藤昭夫先生(早稲田大学名誉教授)の激励のお陰であった。先生は、日本語の文章、本の内容等、原稿を逐一検討して下さった。紙面を借りて、先生に深く御礼を申し上げる。先生の御健康を心配していた私にとって、佐藤先生に原稿の検討をお願いすることは大変申し訳ないことであった。私としては、韓国労働法の充分な紹介を心がけたが、それが十分に果たし得たかどうかを考えると、言葉では表規できない重い心境である。 
 最後に、これまでに直接教えをいただいた島田信義先生、中山和久先生、山本吉人先生、籾井常喜先生、金子征史先生、さらに日本労働法学会の会員の皆様に、心から感謝する。 
<以下省略> 


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