第2版はしがき

 社会・経済の著しい変化に即応するため、各種の法改正の大波が続いている。本書が扱う民法総則の分野においても、初版発行以後に、第3章「法人」が大改正された。すなわち、平成18年6月に、非営利法人一般に関する特別法である「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18年・法48号)、一般社団・財団法人の公益性を認定する「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(平成18年・法49号)、および、これら2法の施行に伴う「関係法律の整備等に関する法律」(平成18年・法50号)が制定された(いずれも平成20年末までに施行)。民法典本体には、法人法定主義および法人の能力に関する規定等が残るだけとなった。
 この大きな改正に対応すべく、本書7章「法人〔権利の主体2〕」について、先行して改訂を行い、本年2月に、別刷りのかたちで小冊子を発行したところである。
 なお、法改正としては、これ以外にも、「法の適用に関する通則法」(平成18年・法78号)による「法例」の全面改正があった。
 今回は、これらの法の改正および、初版発行以後に出された重要判例を盛り込んで、本書の内容のアップデートを図り、版を改めることとした。これにより、読者の皆さんに最新の情報をお届けすることができるものと考えている。

           はしがき

 平成17年(2005年)4月1日に施行された民法の現代語化に象徴されるように,制定以来100年を経過した民法の内実も大きく変容しつつある。
 法学部学生には,この民法の基礎を学び,現実に生起する事象に法的に対処できる能力を身につけることが求められている。
 本シリーズ『法学講義民法』全7巻は,学習者が民法の基礎概念と基本構造を把握し,法学部で修得すべき民法学の水準を充足できるように,構成,内容,叙述の仕方等の点で周到な配慮をしている。叙述に当たっては,各執筆者において,判例,通説を踏まえ,個別の学説の展開は極力避け,均質性を保つようにと意を用いていただいた。
 幸い,本書は,法学教育の現場で最前線に立って民法学をリードされている執筆者の協力を得ることができた。執筆者各位が,深められた研究のもとに簡潔に書き下ろされた本書は,民法を理解するために,十分に力を発揮してくれると思う。
 また,平成16年(2004年)4月に新制度として発足した法科大学院は,今や,第2年目の後半にさしかかろうとしている。新しい法曹養成制度の基盤をなす法科大学院であるだけに,どのような教材を用いてどのように授業を進めていけば制度の理念にふさわしい教育を実現できるのか,各法科大学院において様々の工夫が重ねられているところである。
 とりわけ,大学法学部での単位数の半分にも満たない時間数で,必要な基礎知識と理解力を培うことが求められている未修者については,教員・学生双方に重い課題が負わされているというのが現実のすがたである。
 法学部および法科大学院の教育に携わって感じることは,民法についていえば,教える側にとっても,学ぶ側にとっても,法学教育における質・量ともに最適のスタンダードテキストが欲しいということであった。
 『法学講義民法』は,このような要請に応えるべく,法学部学生を念頭に置き,併せて法科大学院未修者コースの学生にとっても最適の学習書として役立つようにとの願いをこめて企画されたものである。
 なお,本書では,通読を繰り返すことによって理解が深まるよう,細部にわたる叙述は本文内に小活字にして,参照文献や判例の出典は欄外注に出した。本文の通読を容易にすることによって思考の連続性が保たれ,民法学の速やかな理解に資することができると考えたからである。判例については,本シリーズの姉妹編ともいうべき『判例講義民法I 総則・物権』『同・II 債権』との連動を図った。
 さて,『法学講義民法1総則』は,民法典第1編「総則」を扱うものである。ただ,民法の初学者が,最初にこの巻を手にする可能性が高いことを考えて,まえおきとして,民法全体にかかわる入門的な序説をおいた(1章)。また,諸制度を取り上げる順序が,民法典の条文の配列と異なっている。その理由は,総則のルールの抽象度が高く,そのままでは,規律対象(主として財産をめぐる人と人との関係)を具体的にイメージしながら学習することが困難であるので,順序を組み替えて少しでも生活実態に即したかたちで学習ができるようにと考えたからである。おおまかには,売買等の契約の成立,その有効な成立を阻害する諸要因,契約を締結する主体,代理人による契約の締結,法人制度,及び時効制度という順序で叙述している。
 最後に,この企画の趣旨に賛同して協力してくださった執筆者各位に対して,編者として心から感謝を申し上げる。また,悠々社社長の須藤忠臣氏の本書出版に対する並々ならぬ熱意に対し敬意を表したい。
 本書が民法の「全国版スタンダードテキスト」として愛読されることを願ってやまない。


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