〔第3版〕発刊にあたって

小林秀之  

 本書は、最新の民訴法判例の学習書であるが、同時に民訴法全体についての知識も判例学習を通じて得られるように工夫した新タイプのテキストでもある。
 生きた法である判例の理解なくして、民訴法がどのように民事訴訟手続の中で実現されているかを知ることはできない。その意味では、他の基本法と同様、判例学習は民訴法でも必要不可欠であるが、従来の判例解説書は、多数の執筆者が加わり一人の執筆者が一つないし若干の判例しか担当していないため、全体としての統一性に欠け整合性のある説明に欠けるきらいがあった。
 本書では、原則として一つの領域は一人の執筆者が全部の判例を統一的に解説するという方針をとっているため、その領域の判例とその解説を読み進んでいけば、自然に領域全体の法知識も整合的に身につくようになっている。
 本書はまた、戦後の判例を中心に民訴法全体で223判例を収録しており、民訴法の学習に必要にして十分な数の判例を本書一冊で学べるようにしている。そのため、1判例の説明が原則1頁で、重要判例については2頁(例外的に4頁)の構成にしたが、前述したように、一つの領域が一人の執筆者によって統一的に解説されているから、その領域の判例のどこかで十分な説明がなされるようになっている。同時に、可能な限り最大限の情報を盛り込むよう編集を工夫した。具体的には、なるべく図解を取り入れるように心がけた。
 「事実の要約」「判例の流れ」「判旨」の順に読めば判例の内容が理解でき、「判例の法理」と「判例を読む」を読めば判例の位置付けや学説との関係が分かり、さらに判例学習を深めたい場合は、注と参考文献で背景事情を知り追加情報を検索できるはずである。
 2004(平成16)年からわが国でも法曹養成に特化した法科大学院が設立されたことから、判例を通じた法学教育の重要性がますます強調されるようになってきた。その後現在まで、本書のような、判例学習を通じて法律全体の知識が具体的に身につく教育方法が法学教育の一つの大きな流れとなっており、法学部のみならず法科大学院のテキストとしても本書は有益だろう。
 本書の執筆者には、主に学界の研究者で民訴法研究の中心になっておられる方々に、その得意分野をお願いした。御多忙にもかかわらず、本書の編集方針に沿って短期間で御執筆あるいは改訂下さったお蔭で、第3版として発刊できたことに深く謝意を表する。
 本書第3版で追補した判例は23件であるが(前付xv頁)、新判例への言及は全領域に及んでおり、国際民訴や証拠法をはじめ、判例学習のテキストとしては最も広く多くの判例を収録している。
 追補判例23件の執筆を担ってくれたのは、畑宏樹先生(2事件)、薮口康夫先生(27、143事件)、名津井吉裕先生(32、39、54、165、183事件)、田村陽子先生(66、98、125、133事件)、原強先生(83~85、109事件)、田頭章一先生(94事件、95事件)、伊東俊明先生(131事件)、齋藤善人先生(216~218、223事件)である。
 なお、他の法律とは異なる面がある民訴法判例学習の意義については「判例の学び方」を、近時の重要判例や判例全体の動向については「最新・重要判例解説」を参照してほしい。

平成28年満開の桜を見つつ

 

戻る