はしがき

 

 

 

 本書は平成28年度関東十県会夏期研究会のシンポジウムの記録を基に、関係者の論文を加え証拠収集と民事訴訟の今後を多角的に論じたものである。第1 部は、私の基調講演に加筆したものであり、第2部は私と4 名の専門家(弁護士)のパネルディスカッションを加筆したものであり、研究会のシンポジウムの雰囲気が伝わる形式になっている。これに対して、第3 部は、パネリスト5 名の論文と裏方で構成企画を行った後藤弁護士の論文を収録し、第1 部と第2 部とは異なる角度からこの問題の掘下げを行っている。
 シンポジウムのテーマは、本書のタイトルともほぼ重なるが、単に民事訴訟における証拠収集の現状の問題点を指摘するだけでなく、比較法的視点や実務的視点からわが国の民事訴訟の将来(未来)にまで議論を発展させている。比較法的には、証拠収集手続の充実が世界的潮流になっているが、そこには早期に情報を収集し早期に和解等の形で判決まで至らずに紛争を解決することが、社会的にも望ましいというコンセンサスがある。民事訴訟は必ず判決まで行くものだという従来の認識を否定し、これからの民事訴訟は早期の証拠収集により早期に和解等で紛争解決を行うべきだとの新しい認識がある。ところが、わが国では平成15年に導入された提訴前の証拠収集手続が見事に失敗し、世界的潮流に完全に乗り遅れている。しかし、わが国での証拠収集の必要性が弱いかというと、決してそうではなく、文書提出義務の一般義務化にとどまらず、弁護士会照会の爆発的増加にも象徴されるように、強い証拠収集の要請が根底に存在している。
 この問題は、民事紛争解決システムをどのように制度設計するかにかかわっており、民事訴訟はわが国では民事紛争解決システムの中核になっているが、対応を誤ればその地位からすべり落ちることもあり得よう。証拠収集の充実が世界的潮流となっている背景には、早期の証拠収集により当事者が事実を早く認識し紛争を当事者のイニシアチブで迅速に解決することが、社会的にも望ましいという共通認識がある。
 わが国でも証拠収集の充実を怠れば、民事訴訟の将来(未来)は暗いという強い危機感をもって本書は構成されているといっても言い過ぎではない。
 弁護士会のシンポジウムとしては緊張感があるという感想(?)を持たれた読者も多いかもしれないが、それなりの問題提起の役割を果たせれば、執筆者全員望外の喜びである。本書が成るにあたっては、群馬弁護士会の方々の熱意が最も大きいことは言うまでもない。また、このような機会を与えて下さった関東十県会の構成弁護士会にも大いなる感謝の気持ちを表したいし、推薦のことばまで下さった日本弁護士連合会にも感謝の言葉を述べずにはいられない。
 最後に、夏期研究会に参加された多数の弁護士の方々と共に、このような本の出版を引き受けて下さった悠々社に対して言葉に尽くせない感謝の気持ちで一杯である。


 平成29年2 月節分


執筆者全員を代表して 
小林 秀之 

 

 

 

 

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